辿り路21 ~氷の湖と逆さまの樹~
「ここだね」
雲上湖…その入口前で、今一度…と地図でも場所を確認する。雲上湖へは旅の扉があり、それを抜ければ…エイドスの言っていた「目には見えない樹木」がある筈だ。
魔瘴に侵されたグレン王をと治すにはその樹木から落ちる雫が必要だ…と言うのだが、雲上湖にはそこを住処にする危険な竜が居て襲って来るかもしれないと言う事で、気合を入れなおし旅の扉にと触れた…。
「これは…」
旅の扉を抜けた先…そこに広がるのは、眼下に雲の広がる崖の上にある湖…それは気温の低い山頂付近にとあるからか…それとも別の理由からか…すっかりと凍ってしまった透明な床のある広場の状態だ。
その広場…凍った水面の中央付近…逆さまにと透明な樹木が映り込んでいる…が…水面上にその樹木は存在していない…その樹木が目に入るのは、その水面の逆さまの樹木だけだ…。
一歩…その凍った水面へとユイナ達が進み出た時だ…崖の向こうに広がる雲海から巨体が飛び出して来る…。
それは怒りを含む声を上げる…。
竜はすっかり興奮状態であり、こちらを住処の侵入者として認識したのだろう…すぐさまにと襲い掛かって来た…。
その攻撃は氷属性…吐き出されるブレスは、触れた地面…湖の表面をと更に凍り付かせる。
ずっと強くなる事を目指して修行の旅をしていたリョウや、冒険者としての歴が長いルプルは経験が長く、他の職業の経験などもあるためある程度の戦闘にも慣れている。
優位なスキルも身に着けているリョウ達とは違い…
(あれが直撃でもしたら私まで凍り付きそうですぅ~)
一つでもまともに食らっては無事に済まなさそうだ…。
ほぼ…避ける事と…ユイナは僧侶として回復の方にと必死だった気もするが…その戦闘にも勝利する。
竜が倒れ光に消えた後…地上にはその存在が無かった樹木がキラキラと姿を現す。
見上げれば、凍った湖に逆さまに映っていた樹木と同じく…少し透明な枝葉…そこから赤い実が一つゆっくりと落ちて来る。
ユイナ達はそれを聖杯で受け止めれば、聖杯はその雫にと満たされた…。
「これがあれば…王様の症状が治るんだねぇ」
手元をネネが覗き込む。満たされている雫は清く透き通っている。
「今にも戦を…って風やったし、急いで届けた方がえぇね」
グレン王はガートラントへと向けて戦争を仕掛ける…そう宣言し、兵達には戦準備をさせていた。町の人もその触れを聞いて不安が広がっていたのだ。
ユイナ達が聖杯を満たした雫をと持ち帰ると、兵士長からエイドスとのやり取りを聞かされていた兵達も待ちかねた…そう言う風に玉座の間へと通された。
すぐにと気付いた兵士長が駆け寄るのに、ユイナ達は確かに…と聖杯を預ける。ここから先は彼らの仕事…。
ユイナ達はその成り行きを…少し下がった所から見守る事となった…。

