辿り路16 ~ウェディと巨猫…古い誓い~
計画がバレた事…より…邪魔が入った事…より…ヒューザにより「ブタネコ」と呼ばれたことに特に怒り狂って襲い掛かって来たリベリオとの戦闘には、ユイナ達の方が勝利する…。
が…破れかぶれとばかりに、
「こうなったらジュニアだけでも道連れにしてくれるニャ!」
と、リベリオはその剣先を、子猫を抱えていたソーミャ達の方へと向ける…が、振られた剣はヒューザによって止められる。
剣の使い手としての実力差はあきらか…が、
「ネコは殺しちゃいけねぇってな、死んだじいさんと約束してるんだ」
ヒューザはそう言って、殺しはしないから今すぐ去る様にとリベリオにと脅して剣を向ける。それにリベリオは悲鳴を上げて部屋から逃げて行った。
ようやっと静かになった所で、ヒューザがソーミャにと子猫を親猫に返す様に促す…が、ソーミャはそれに躊躇する…。
彼女にとってはやっと手に入れた「家族」…離れるのが寂しいのだろう…。そんな彼女にと、親が居ない寂しさを知る者が、子猫を親から引き離したままにするか…そう問いかけたヒューザに、彼女はハッとした様子…。
(…そう言う貴方も…知る側の人の様ですわね…)
寂しさはありながらも、子猫をと親猫…キャット・マンマーにと返す。
港に流れ着いていた子猫を、捨てられたと思って自分の家族にするためにと隠して来た事を詫びたソーミャに、マンマーは逆に自分の部下のしでかした事であり、ソーミャはそれを救って愛情をかけて面倒を見てくれたという事に礼を返す。
子猫を受け取ったマンマーは母親の顔…とても嬉しそうだ。相手が魔物とは言え、狂暴にと無差別に襲って来るでもなく、人と同じ言葉で会話もできる相手…家族の再会は相手が何者だろうとホッとする。
子猫を抱きかかえた彼女はユイナ達にも届けた事への礼を告げ、ヒューザにも言葉を向ける…。
彼女もまた…先代の長と「ウェディの者を殺してはならない」そういう約束をしていたらしい。ヒューザが彼の祖父としていた約束と同じような約束であり、彼女とヒューザがここまでの間…お互いに知らぬ所で実行して来た誓いだった…。
その昔、ウェディと巨猫族は今の様に争うのではなく、手を取り合って巨大な敵と戦った事もあったと言う…。
ただ、キャット・マンマーがその誓いを立てていたとしても、魔物達は全てが従う者ばかりではない。無差別に襲い掛かる者などもいるだろう…それには好きにしてもかまわない…そう彼女は言う。
襲われた時にまで誓いを優先する事もなく、抵抗する必要がある時は戦った所で咎める事はない…そういう言葉だろう。
そんな彼女の言葉に、ヒューザは「興味がない」そういう答え…用が済んだなら帰るぞ…と、皆を促す。
それでも離れがたい…そんな様子のソーミャには、「別れはサッパリするもの」そう告げて連れ出していた。
(あの方…実は…褒められるのや認められるのは…苦手?)
マンマーの言葉を受けた時などの反応にと首を傾げる。
促されたソーミャはそっと…子猫に向かって小さく声をかけて手を振ると、さっさと出て行ってしまったヒューザを追いかけて部屋を出て行った。
ユイナ達も巨猫の巣を後にし、ジュレットの町長の家へと戻る…。子猫が親猫の手に戻るまでの経緯などは、先に帰っていたヒューザによって報告は終えられていた。
町長もうまく事が運んだ事には喜ぶ様子。加えて、町の周りに増えていた猫の魔物達も、やはり子猫の気配にと集まっていたのだろう…すっかり元通りの町の様子にと戻ったらしい。
そんな安堵する様子の町長にヒューザの方は呆れ顔…。子猫を探しては町に来なかったとしても、魔物は魔物…安心しきって気を抜くのは早い…そう言いたいのだろう。
が、一方で町長は、町の外にその姿が見えなくなっただけでも一安心…町の住人達も日々不安にならずに済むのならそれが幸いだという風。すぐにと襲われる事が無くなったのならば、暮らしは平和になるだろう。
「君達の働きは実に見事だった」
町長は今回の件の解決を受けて、キーエンブレムをと差し出す。ユイナ達はそれを受け取る。
町長はヒューザにも青のキーエンブレムを与えると言うが、ヒューザはそれを、
「いらねぇ」
と断っていた。断られた事に町長は意外だと声をあげ、キーエンブレムを持っていると旅にも有利である事を話すが、ヒューザはそれにも首を振る…。
彼には彼で…何か色々と思う所あったらしく、そんな物には頼らず自らの力だけで認めさせる…自分が出身村から旅に出た時に心に決めたのだと言う…。
そうして…ヒューザはキーエンブレムは受け取らないまま、ユイナ達にも同行の礼を告げると、用があるから…と先に町長宅を出て行った。

