辿り路4 ~領主と少女とカムシカと…~
領主の屋敷へと向かう途中…ネネはとても元気に興味を持った物には駆け寄ったり、今まで目にしたことのなかった様式の建物等にも興味を持ったり、町中で人々になじんで暮らしているカムシカにも駆け寄ったり…と、とても明るい。
そのついでの様に、恋する少年や…郵便局員のお願い等も、放っては置けないという様子で、必要な品をモンスターから取って来るクエストを引き受けていた。
領主のお屋敷で話を聞く間も、頼みを受けて娘であるフウラを追って町を出た道中の間…ネネの感情は豊で、コロコロと表情を変える。
一方で、リョウの方は道中で襲って来るモンスターにも、然程騒ぐ事もなく、素早くやるべき事をこなす…そう言った風。旅慣れているという事もあり、町の外を移動するのにも不慣れなユイナ達にとっては、とても頼りになる。
移動中も後々必要になったり、不要なら町で売って旅費に出来る素材が採取できる場所…モンスターから取れる素材の使い道…など、旅に必要な知識も豊富で、移動の合間にも色々と教えて貰った。
丘の上…追いついた時にはフウラはモンスター達にと襲われていたのだが、それを助けに入ったのはカムシカ達…。
アズランの町では、先代の風乗りであった人が亡くなって以来、儀式は滞っていたと言う…その先代が領主の妻であり、フウラの母…。
その人が亡くなる事となった出来事の一因となったのは崖から落ちてしまったカムシカの子…。
誰かが悪かったわけではない…不幸な事故が起こってしまった…それはフウラもわかりながらも、心情的には受け止め許す…とは幼かったフウラにはできなかったのだろう。
責める相手としてカムシカへと嫌悪を向け、嫌うがゆえに、母の後を継いで風乗りにとなる事を拒んでいたのも、その想いは察する事が出来る。
けれど、フウラはフウラなりに…町の様子や、親しくしていた人の病の話…母の墓前に生前好きだった花を供え続けるカムシカの様子…色々な事から思いを胸に纏め、ようやく儀式に挑む決意…。
そんな様子を、リョウは静かに見守り、ネネはまた…フウラにと感情移入して泣いたり笑ったり…と、目一杯応援していた。
タケトラにと報告した後、フウラの儀式へ挑むための準備にも手を貸すという事になり、道中の安全のためのモンスター払いや、受け取りの見守り…などにと出向く。
旅の仲間は偶然出会った二人と、リョウが旅する途中に出会い懐いたらしいホイミスライム…。皆が一緒の旅は1人で村からアズランへと旅をしていた時よりも、ずっと明るく楽しい物になる…。
普段のリョウならば不要な時には避ける…などしつつ、上手く選んで通っていたのだろう道を、ただまっすぐに駆け抜けては、襲って来るモンスターと戦う…など、見つかっては追いかけられる…そんな道中だ。
始めに手綱を受け取り、次は衣を…と、納められているという塔へと向かったのだが…その塔の前…テレポの登録ができる場所まで来た所で、
「塔の中は…どんな仕掛けがあるか分からないし、防衛のためのモンスターや、入り込んだモンスター…戦闘も増える筈…君達…少し…装備位揃えた方が良くない?」
少し苦笑…そういう様子でリョウが言う。テレポを登録さえして置けば、すぐに戻ってこれるのだから、一度町へ戻って装備など整えるべき。そういう勧めで…ユウナ達は再びアズランの町へと戻っていた…。
リョウのアドバイスを受け、冒険者としての旅に必要な装備など新調する。買い物に便利な取引所、少し遠くても店まで出向く方が買物はお得な物…など、ちょっとしたマメ知識など含めて色々旅する中で身に着けた事を教えて貰う。
そうして準備を整え…再び塔へ…。丁度カムシカ達と共にやって来たフウラとも合流し、塔の上層を目指す。
複雑な繋がりになっている回廊を…ここでもまた、モンスターに襲われたり、そーっと通り抜けようとして…見つかったり…。
「モンスターが何か落としたね」
「短剣だ」
「さっき…同じのを町で買ったばかりだよぉ!」
手に入る物にも一喜一憂しながら進む。
「これは…」
「行き止まりです…ね」
「あっれぇ?」
選んだ道の先…どこにも行く事が出来ない行き止まりの場所…が何度か。
「あ、でもホラ、宝箱はあるよ~」
無駄ではなかった。そういう事にして、気を取り直して一度下へ降りては道を変える。何度か繰り返す内に、
「ここも宝箱だけ?」
また降りて登り直しなのか…と、見回す。そろそろかなりの上り下りで疲れて来た所だ。
「あっち! あそこ渡れるよ。それに…正解! って感じのが居る」
ネネの指さす方…向こう側へと渡るための橋の上…ここまで見て来たモンスターとは質が違う…いかにも「門番」風にと佇む姿が見える。
「それじゃぁ…さくっと先へ、進みますか」
リョウが背負っていた大剣を構え、モンスターと向かい合った…。

