辿り路1 ~歩みなおす日~
それは…突然の事だった。平和だった村…両親を亡くした姉弟をと、村中の人が見てくれていた、優しく穏やかな村…だった。
空に魔瘴が渦巻き…赤く燃える故郷…目の前で消えた弟と倒れる人々…わけがわからないままに…全てが燃え落ちて行く…。
その日の朝…滅びの予言はなされていた…襲い来たモノは『時渡りの術を使う者』として、その刃が向けられたのは自分…。
抗う力などなく、そこで命を落とした…筈だった。けれども…意識の中…その魂がたどり着いたのは不思議な神殿の中…。
神像の並ぶ空間で、その声は、冥王により命の尽きた自分には、まだ果たさなければならない役目がある事を告げた。
隔絶されたエテーネの島の中では知らなかった世界…広く…多くの種族が暮らす世界へと向かえと促され、祈りをささげる。
その同じ時…不運にも命を落とした少女「ユイナ」…偶然なのか運命なのか…同じ名を持つ彼女の体にと入り目を覚ます…。
目覚めてすぐに…一瞬とは言え「死んでいた」事に先に気付いていた、同じ学び舎で学んでいた少女が少し騒いでいたのも、何が起こったかを見ていない人には一蹴されて、少し気の毒な事に…。
意識はエテーネで暮らしていた「ユイナ」のままにあり、体は違っていても自分…。ただ、体の持ち主である「ユイナ」が認識していた事もある程度にはわかり、人の顔と名前は…元より知っていた様にと理解できる。
そうして、今日が大事な試験の日だという事も…。
自分が魂としては別の人間だ…それに、ツスクルを治める巫女ははっきりと気付いていたし、話す内容などからうっすらと、様子の違う事に気付く者もいるようだが、多くの皆には変わらず見えている様…。
エテーネで暮らしていた頃には見た事が無かった種族達…ツスクルは自然豊かな大陸にあり、世界樹が見守っている地での穏やかな暮らし…。けれど、その試験を受ける過程で訪れた世界樹からは、魔瘴が噴き出すのを目にする事になった…。
その魔瘴は、突然世界を包んだ光によって祓われたのだが…世界では今何かが起こり始めている前兆…。
『その魂には使命がある』…不思議な声はそう言っていた…。その役目が何かは今は分からないけれど…『一人前の証』を得る事が出来た事もあり、これから探すための旅をしようと思う。
そう…消えたままの弟の事…今は状況が知れない故郷の事を知る方法…そして与えられているという役目の事…色々な事を探す旅だ。
とは言え、まだ自分が一足飛びにと世界中を簡単に巡るには力が足りない自覚はある…。『ユイナ』はまずは…と、行先を旅立ちのツスクルから最も近い町…アズランへと決めた。
