辿り路14 ~猫と子供とウェディの旅人~

ユイナ

 ユイナ達が町長の家を訪れれば調査員も戻っていて、町長への報告を済ませている。彼はこちらにも礼を言ってまた次の調査のために一度ヴェリナードへ帰ると旅立って行った。

 その後町長から今回の礼金を…と受け取ったのだが、ユイナ達が本当に目的としていたのはキーエンブレムだと伝えれば、今回のお遣い程度では与えられない…そう言われる。

 そんな話をしていた時だ…町の人が一人、とても慌てた様子で町長宅へと飛び込んで来る。

 何か大変な事があったのだろう…彼の話は慌て過ぎて要領を得ない…。が…どうやら町の中に猫がいた…そういう話。

「猫…」

 ユイナが想像したのは、小さくて可愛らしい猫…だが、少し前…船着き場の荷物置き場で見かけた、ソーミャの抱えていた猫を思い出す…。

(あれは…猫さんと言うより…猫の魔物の赤ちゃんでしたね)

「アレ連れて来たんか…」

 リョウとネネも思い当って顔を見合わせる。

 「猫」ではなく「猫型の魔物」が町に現れたのなら確かに大騒ぎである。

 それも、ソーミャが…と言う住民の言葉からすれば、どうやら…あの後ソーミャがあの猫の魔物を町の中まで連れて来てしまった…そういう事だろう…。

 まだ赤ん坊とはいえ、魔物は魔物…赤ん坊でまだ何もできないだろう猫相手には慌て過ぎだ…とは思う所ではあるが…放っておいてその親が出てこないとは言い切れない。

 ともかくソーミャの家まで来て欲しいという住民に、町長はユイナ達にも来るようにと言ってから慌てて家を出て行く。

 ユイナ達もその後を追いかけた。

 ソーミャの家では大人達が取り囲んで騒ぎになっている…。その大人達に囲まれた部屋の奥…魔物の子猫を抱えたソーミャが、必死で子猫を庇っていた。

 その子猫を連れ込んだ事について、町長は優しくソーミャに問いかけるが、周りの大人が更にピリピリとしている…。

 子猫相手に酷く神経質だと思えば、どうやらこの所町の近くには猫の魔物が増え、襲われてケガをしたという人が増えていた様だ。

 その責めていた人の身内も、つい最近猫の魔物に襲われてケガをした中の1人だった。もう我慢も限界…丁度そう言う時期だったのだろう。

 その猫の魔物が増えた原因が、その赤ん坊を連れて来たからではないのか…そう思えば町の中には置いておけない…そういう事の様だ。

 と言う事で、町の人達は町長にと処分を迫る…。それをソーミャが泣いて拒むのに、町長は強硬手段には出れずに戸惑う…そんな町長を「しっかりしてくれ」と周りで住民達が声を上げる…。

 町長が再びどうにかソーミャを説得して猫を取り上げよう…そうしていた所…。

「見ちゃいられないな…」

 家の入口には一人の青年が現れる。ジュレットの住民では無い様で、住民達にも見覚えがない相手の様…服装からすれば「冒険者」として旅をしている人の様…。

 その人は、周りの大人達が戸惑っている中、ソーミャから猫の魔物の赤ちゃんをとひょいと取り上げると、自分が海にでも捨てて来る…そう言って出て行こうとする。

 ソーミャはその子猫を「家族」そう言い、連れて行かないでと訴えるのだが、彼は「バカを言うな」と突き放す。

 ソーミャにはその猫にと気持ちを寄せてしまう理由がある…それは分かるが、確かにそれは「魔物」…今は子猫でただ鳴いているだけだが、すぐに大きくなる。

 魔物の中には、魔物使いにと惹かれて仲間として共に暮らし、人々の暮らしの手助けをする魔物もいるが、それは正しく知識と能力のある魔物使いにと飼われて教育されている物だ…このまま普通に育ってはただの魔物…このまま町に置いておくわけには行かないのは事実…。

 親がなく…おそらく捨て子だったという生い立ちから、同じように「捨てられた」と見えた子猫に思いを寄せているソーミャの気持ちも分からなくはないが、ただの猫とも訳が違う…子猫をどうするか…はともかく、このまま彼女の元にと子猫を置いておく事は出来ないだろう。

 それにソーミャは泣き崩れ、それを背に家を出ようとしていた彼を、町長が「ちょっと待ってくれ」と呼び止める。

 彼と一度話をしたいと、家に来るようにと説得するのに、彼もそれを了承した。

 ユイナ達も来るようにと町長から言われ、町長の家で話をすることになる。

 突然現れたウェディの青年は「ヒューザ」。町長は彼に、猫を海に放り込むのは考え直して欲しい…そう言う。

 魔物を町に置いておくという意味や、ソーミャに返すというような意味ではなく、猫の魔物の赤ん坊に町の人が酷いことをしたとなれば、魔物達からどんな報復をされるか分からない…それを警戒しての事だ。

 なので、乱暴な手段を取る事を止めた町長…ふと、一緒に居たユイナ達にと、ヒューザが視線を向ける。

 そうして…彼が提案したのは、その赤ん坊を親にと返す事…だった。ただ、その親がどこの誰か…など今分かるわけではないため、探すにも一人では面倒なために、ユイナ達にも手伝え…そう言った…。

 保護して育てるのはもっての外…魔物として退治してしまうのも報復など思えばできないとなれば、親を探して返す…それしかないだろう。

 外にただ連れ出して、町から離れた場所にと適当に放り出して置いても無事に済むとも思えないのだ。それはそれで、町の人のせいだ…と魔物が考えて報復に襲って来る可能性は捨てきれない。

 そういう事ならば…と、安心した様子で、町長も助かった…そういう様子で、親を探すならば、猫の魔物達が集まって暮らしている島があると教えてくれた…。

 猫島の巨猫の巣と呼ばれる特別な場所まで行けば、何か手がかり位は得られるかもしれない…そう言う町長の言葉に、アテもなく探すよりは…と、目的地は猫島にとヒューザも頷く。

 ユイナ達にも、町長はこれが上手く行けばキーエンブレムを与えるという約束を向けて、ユイナ達もそれを正式な依頼として出すと言う町長にと、確かに引き受けると頷いた。

 が…いざ出発と言う時になって、町長の家にと飛び込んで来たソーミャが扉前にと通せんぼする。どうやら扉外で盗み聞きしていたらしい…。

 自分が親として子猫を育てる…それがダメなら自分も猫島まで連れて行け…そう訴えるソーミャに、始めは断ろうとしていたヒューザだったが…放って行って後からこっそりとついて来られた方がメンドクサイ…そう判断したらしく、その言葉に折れた…。

(この方…面倒だなんて言いながら…案外…小さな子への扱いは甘いですわね…)

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