辿り路9 ~15年目の約束~

ユイナ

 サーカステントで団員達を訪ねれば、彼らの元へは団長は戻っては居なかった。銀の丘で起こったことを彼らにつたえれば、彼らの団長への信頼は厚いらしく、彼らは団長を信じる…そう言う。

 とは言え、彼らにも団長の目的…何の為に急に子供達を攫うなど言う行為に出たのかはわからないらしい。

 そんな話をしている所…。

「た、大変だ!」

 テントの外に居たサーカス団員の1人が、慌てた様子で駆け込んでくる。

「空が! 不気味な色に!」

 何かが起こっている…そう聞いて、団員達と共にテントの外へと飛び出す…そうして見えた空は…暗く淀み…黒雲に覆われていて禍々しい気配が立ち込めている。

「…なんだこりゃ…」

 団員達と共に空を見上げる…その上空…。

「今日で15年目だ…」

 何者かの声が聞こえていた…。それが話しかけている相手は「アルウェ」…。ユイナ達が知る名前ではない。

 そしてそのアルウェを探している相手は…魔物だ。町中で人々が騒然と空を見上げている。…が、アルウェ…その当人が現れる様子はない。

 そして…その魔物がオルフェアの町へと現れ、アルウェを相手に要求している事…それが「オルフェアの子供達」だった。

 その子供達が町に居ない事がわかると、魔物は「アルウェ」と言う人物にと怒りをあらわにしている…。

「何もかもアルウェの言った通りじゃねぇか…」

 魔物の怒りに割り込んだのは…ナブレットだった。彼は魔物相手に子供達を攫ったのは自分だと宣言し、ふざけた様子で挑発し…魔物を煽っている。

 そうして…彼は魔物の攻撃をひょいと避けて余計に魔物を苛立たせながら、ユイナ達の傍を通り過ぎる…。

「オレがヤツを西にあるミュルエルの森へとおびき出す」

 ユイナ達にはオルフェアを守る手助けをするため、そのミュルエルの森の奥にあるフォステイル広場まで追って行って、そこで魔物を倒す様にと依頼して、魔物を引き付けながら走って行く。

「ま…修行にもなるし…魔物退治ってならわしは問題ないで」

 オルフェアの町を救う…そんな使命感の為にではないが、魔物退治に向かうなら断る理由はない…そう言うリョウと、

「子供達を狙っていた魔物なんて放っておけないよね!」

 人助けは頼まれずとも追いかける…そんな気合のネネ。ユイナも町の人達と子供達を救う事に反対するはずもなく、ナブレットの言うミュルエルの森のフォステイル広場へと急ぐ事にする。

 案内として一緒に居たルプルも、町の事ならば他人事でもない。ここまで付き合ったのならば最後まで共にと、魔物退治にも付き合ってくれる事になり、一緒に町を出て森への道筋もマップで見ると…と位置を教えてくれる。

 襲って来るモンスター達を捌きながら、分かれ道の多い森の中をマップを見ながら進み、フォステイル広場へとたどり着く…。

 広場では…相変わらずの様子でナブレットが魔物をカラかっているかの様に挑発しながら攻撃をかわしている。が…様子が少しおかしい。

 広場の奥にある像の上に乗ったナブレットへと魔物が炎をと吐き付ける…が…その像の周りには不思議な光の壁が出来、その攻撃をと霧散させた…どうやらこの場所では魔物が本来の力を発揮できていなかった様だ。

「今だ! ヤツを倒すんだ!」

 ナブレットの言葉にユイナ達は武器を構える…。この広場の不思議な力で能力を抑えられている魔物は、ナブレットの挑発への怒りも加わってそうとう頭に来ている。

 そうして…ユイナ達は魔物と戦い、事の始まりである魔物は…15年前のアルウェに対しての恨み言を最後まで口にしながら倒れる事になった…。

 魔物が霧散し静かになった広場…。見守っていたナブレットが駆け寄って来る。

 そうして…彼の口から15年前の約束が語られる…。アルウェと言う名の彼の妹…彼女が幼い頃から持っていた不思議な力…色々なコトを言い当てる能力の事…。

 ナブレットはアルウェの事を懐かし気に…思い出しながら語る。その口調にどこか悲しげだ…そう思ったのもその筈。彼女は既に亡き人となっていた。

 その彼女が魔物と交わした「15年の約束」。それは時間稼ぎの為に言った約束だ。そして…その15年目に起こる筈の悲劇から、子供達を救うために兄にと願った「15年後の約束」…その為にナブレットは妹アルウェから頼まれサーカス団を立ち上げたと言う話を語る。

 そして…15年目の今日、その日に訪れている旅人として、アルウェはユイナ達の事も予言していた…見た目には強そうには見えない…だとか、髪型がいまいち…だとか…散々な言われようだったようなのだが…。

(ここまでの旅の途中で…メギストリスでは美容院もあるとか聞いた…今度…メギストリスへ行く事があったら…絶対行こ…)

 口には出さないが…ひっそりと心に決める。

 ただ彼女は…訪れる旅人…ユイナ達がオルフェアの町を襲って来た魔物の事は必ず倒してくれる…そう信じていると語ったために、そのアルウェの言葉を信じてナブレットは、言われるままに子供達に人気のサーカス団を立ち上げ…15年目のこの日。妹との約束通りに子供達をすべての目から隠すべく、不思議な扉の向こうへと入れたのだ。

 そうして…少しアルウェの事を語った後、ナブレットは魔物が倒された今なら開くだろう扉から子供達を出すためにと、銀の丘へ向かうと告げて去って行った…。

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

記事URLをコピーしました